Ohara R., and T. Yamazaki, 2025: Forecasting error of cold-air damming atmospheric fields in a mesoscale numerical weather prediction model. SOLA, 21, 464-468.
https://doi.org/10.2151/sola.2025-063
Ohara and Yamazaki (2024)[1]の手法を用いて, 2007年1月から2024年12月までの期間において関東地方で発生したCAD事例を抽出し, CAD発生期間における気象庁のMSMの予測精度を検証しました. CADの下層寒気場の予測には明確な高温バイアスが存在しており, 12時間予報値で+0.8Kを超える高温バイアスが示されました. 対象とした18年間で予測の改善傾向がみられるものの, MSMのモデルがNHMからasucaに更新されて以降の近年でも高温バイアスがみられることがわかりました.
今回対象とした期間において, MSMの水平解像度は5km一定であったにもかかわらず, 長期的な予測の改善傾向がみられました. 先行研究[2]では, 沿岸前線やCADの寒気の張り出しが過小となるバイアスの主要因として, 不十分な水平解像度の下での平滑化によってモデル内の地形が実際より低く, せき止め効果が過小であることが指摘されています. 本研究の結果からは, そのようなバイアス要因以外にも下層寒気場の予測精度に影響を与える要因の存在が示唆されました. ただし, 高温バイアス域は山脈風上側の下層寒気内に限定的な領域に存在しており, モデル地形の高さが重要であるとする先行研究の結果と矛盾するものではありません.
今後の精度改善に向けては, 高解像度化による地形の精緻化だけでなく, 様々な非断熱過程に関連する物理スキームの改善にも注目すべきと考えています.
References
[1] Ohara, R., and T. Yamazaki, 2024: Relationship between cold-air damming and heavy precipitation in the Kanto region. SOLA, 20, 264−272.https://doi.org/10.2151/sola.2024-035 [2] Suzuki, K., T. Iwasaki, and T. Yamazaki, 2021: Analysis of systematic error in numerical weather prediction of coastal fronts in Japan’s Kanto Plain. J. Meteor. Soc. Japan, 99, 27-47.
https://doi.org/10.2151/jmsj.2021-002