CADの予測における地形とPBLスキームの影響を比較した論文がSOLA誌に掲載されました

Ohara, R., and T. Yamazaki, 2026: Relative importance of orography and planetary boundary layer schemes in forecasting cold-air damming in the Kanto region. SOLA, 22, article number 38. https://doi.org/10.1007/s44393-026-00039-7

Ohara and Yamazaki (2025)[1] では, 気象庁のMSMにおけるCADの予測精度の課題が明らかになりました. 彼らの研究では, CADの下層寒気の過小評価による高温バイアスが指摘されています. 本研究では, 2007~2019年の期間において, 気象庁のメソスケールモデル(MSM)による予測精度が特に悪かったCAD30事例を抽出し, それらの事例を対象とした数値感度実験を実施しました. 主な数値実験は2通りの地形(IO v.s. MO)と2通りの境界層スキーム(MYNN3 v.s. DD)を組み合わせた4通り(IO_DD, IO_MYNN3, MO_DD, MO_MYNN3)とし, 30事例について1km解像度でこれらの数値実験を行いました. 地形については, GTOPO30を1kmのモデル格子に内挿したIO地形と, 5km格子に双線形内挿してから1kmの計算格子に内挿した地形MOを使用し, 解像度による地形表現の違いが与える影響を調査しました. 境界層スキームについては, MSMなどでも使用されているMellor-Yamada-Nakanishi-Niino level-3 (MYNN3)および, 高解像度のLESなどで用いられるDeardorffスキーム(DD)を使用しました.

地形の有効解像度が高いIO実験はMO実験に比べて下層寒気が強い傾向が確認されました. これは, 沿岸前線の研究において, 解像度不足による地形の平滑化が下層寒気のせき止めの過小評価要因であることを指摘したSuzuki et al. (2021)[2]と整合する結果です. 本研究では, 境界層スキームの違いが下層寒気の予測に与える影響も明らかになりました. DD実験に比べ, MYNN3実験では暖かい海上での下層寒気の拡散が強く, CADの寒気が弱まる傾向が示されました. さらに, 500m以下の下層では, 境界層スキームの違いによるインパクトは, 地形表現の違いによるものと匹敵するかそれを上回る大きさであることが示されました. さらに, 地形表現の違いの影響は予報開始後12~18時間かけて成長したのに対し, 境界層スキームの違いによる影響は開始後5~6時間程度で顕在化しました.

将来的なモデルの高解像度化に伴い, 地形の精緻化による地形障壁効果の再現性向上が期待される一方で, 境界層スキームの”グレーゾーン”においてどのような境界層スキームを用いるかについても注意が必要と考えられます. 本研究ではあくまで実験設定の違いによる相対的な比較を行ったものであり, 予測精度そのものへの影響の直接的評価は, 観測データとの比較検証が必要です.


References

[1] Ohara R., and T. Yamazaki, 2025: Forecasting error of cold-air damming atmospheric fields in a mesoscale numerical weather prediction model, SOLA, 21, 525-533
https://doi.org/10.2151/sola.2025-063

[2] Suzuki, K., T. Iwasaki, and T. Yamazaki, 2021: Analysis of systematic error in numerical weather prediction of coastal fronts in Japan’s Kanto Plain. J. Meteor. Soc. Japan, 99, 27-47.
https://doi.org/10.2151/jmsj.2021-002